(無署名記事)
DCプランナー(企業年金総合プランナー)メールマガジン(第109号)にコラムを提供しています。
「運用商品の除外要件の緩和で、確定拠出年金市場は活性化するか」
「運用商品の除外要件の緩和で、確定拠出年金市場は活性化するか」
______________________________________________________________________
現在、国会に提出されている確定拠出年金の改正法案には、「運用商品の除
外要件の緩和」が盛り込まれています。
これは、企業型年金規約に予め定めることで、労働組合もしくは従業員の代
表者との労使合意をもって、運用商品を除外できるようにするものです。今ま
では、当該商品の保有者全員の個別同意が必要とされていましたので、運用商
品の除外例はありませんでした(運用商品の繰り上げ償還を事由とするものを
除く)。
現状では、運用商品提供機関にとっては、制度の導入時点で、いかに運用商
品を企業型年金規約に盛り込んでもらうかが重要な課題となっていました。ま
た、信託報酬等が低廉な運用商品等を追加で提供しても、既存の割高な運用商
品は除外されることがなく、加入者があまり積極的にスイッチングを行わない
ことなどから、魅力的な商品であっても十分に利用されていませんでした。
今回の緩和が実現することで、除外が進み、商品の入れ替えが柔軟に行える
ようになることが期待されています。例えば、パッシブ運用を行うインデック
スファンドについては、パフォーマンスの格差が比較的小さいため、信託報酬
等の差異に注目した入れ替え等は行いやすいといえますし、運用商品の入れ替
えの意義や効果は大きいと考えられます。
しかし、事業主や運営管理機関が運用商品を安易に除外することを、慎重に
考えていく視点も求められます。というのは、手数料の問題を除くと、「除外
に値する悪い投資商品」を見極めることは簡単ではないからです。例えば、ア
クティブ型のファンドの運用実績がこの5年間低迷しているとしても、投資対
象の市場が一時的に低迷しているからなのか、ファンドマネージャーの能力が
不足しているからなのかを判断するには、20年以上の期間を要するとの考え方
もあるほどです。このため、第三者機関の定性・定量評価を活用するなど、客
観的な分析を行うことも、除外にあたっては重要になるでしょう。
また、制度発足時に運用商品を選定した事業主や運営管理機関の選定責任も
忘れてはなりません。現在の除外理由が加入者の利益を最大限に尊重した判断
であることについて、その必要性とともに労働組合等に説明しなければなりま
せん。また、除外を決定した後も、加入者に対してしっかりとした情報提供が
求められます。
運用商品の除外要件が緩和されることにより、確定拠出年金の運用市場の活
性化が図られることは間違いありません。市場が健全に発展していくためにも、
関係者の利益等ではなく、加入者の利益を最大限に尊重する観点から、運用商
品の見直しに取り組んでいくことが大切です。