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[新聞] 産経新聞 フリーターの老後(上)正社員のすすめ


2006年10月16日 産経新聞
フリーターの老後(上)正社員のすすめ についてコメントしています。
http://www.sankei.co.jp/yuyulife/lifeplan/200610/lfp061016002.htm


■不足する将来の備え
 若年層で正社員にならない「フリーター」が200万人を超え、最近では就職の機会を逃し、30代半ばになってもアルバイト生活を続ける人も増えています。民間の試算では、正社員とフリーターの生涯賃金格差は「2億円以上」。何より深刻なのは、貯金も年金も不十分なまま迎える老後の生活設計でしょう。「フリーターの老後」の第1回は外食産業のトップが説く「正社員のすすめ」です。(中川真)
 「バイトで入った子が新たな目標を持ち、初めて夢に向かって進んでいく姿を見ると、『この会社をつくってよかった』と痛感します」
 毎月1回、ビデオレターで全従業員に語りかけるのは、居酒屋「和民」などを展開するワタミの渡邉美樹社長だ。
 仕事への取り組みや接客の心構えなどに加え、若いフリーターに「夢を追え」と訴える。社長自身も大学卒業後、事業資金を稼ぐために宅配便のセールスドライバーの仕事をした経験を持つ。
 ワタミグループのバイトは約1万5000人以上。フリーター抜きに同社の経営は語れない。渡邉社長は「フリーターの将来を常に憂えている」という。「正直言って、安い給料でたくさん働くフリーターは、会社にとって都合のいい存在だ。だけど、それでいいのだろうか。早く本当にやりたいことを見つけてほしい」(渡邉社長)。
 ビデオレターでは「一歩踏み込んでワタミの社員になることも、選択肢の一つにしてほしい。違った世界が見えてくるはず」と呼びかける。社訓ともいえる「夢」に共感し、業務に精通したフリーターは、有力な即戦力。昨年度は37人のバイトが正社員になった。
 「坐・和民」の新宿野村ビル店長、米塚圭太さん(26)もフリーター出身。19歳のとき、バイトとしてワタミに入った。「当時の店長がとても魅力的で、大学よりバイトが楽しかった」と4年生で学校を中退した。フリーター生活に入ったが、「ずっとワタミで働きたい」と一念発起。一昨年秋に正社員の採用試験に挑戦してパスした。
 「仕事内容は変わらなかったが、責任が重くなった」というのが、正社員になった直後の印象。現在は約20人のバイトの先頭に立つ。
 バイトから役員に登りつめた人もいる。その1人、ワタミフードサービスの栗原聡社長は「フリーターが悪いとは思わないが、人生を刹那(せつな)的にではなく、長期で考えてほしい。それが育ててくれた親や、いずれ持つ子供への責任じゃないでしょうか」と強調する。
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 「刹那的」。フリーター問題を考えるキーワードだ。フリーターを選んだ人の多くが、「正社員より給料の手取りが多い」ことを理由に挙げる。「親にお金を借りている。返済のための手取りを考えると、フリーターの方が正社員よりいい」(20代男性)というわけだ。
 見かけの手取りが高いのは、医療保険や年金などの社会保険料が給与から天引きされないからだ。
 厚生労働省によると、年収130万円以下なら、親の組合健康保険に扶養家族として入れる。保険料はかからない。一方、組合健保はアルバイトでも「常時雇用の関係にあれば、強制加入の対象。基準は同じ仕事をする正社員の所定労働時間の『おおむね4分の3』以上」(保険局保険課)という。
 しかし、年金や貯金など「将来の備え」に関しては、フリーターでは限界がある。「老人ホームに入るにもお金が必要だ。その日暮らしでは幸せになれない」(渡邉社長)のが、この国の現実だ。
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 フリーターには大幅な昇給や退職金はない。ファイナンシャルプランナーで若い世代の将来設計に詳しい山崎俊輔さん(33)も、「大卒後38年間、年収200万円程度でフリーターを続けると、生涯賃金は7600万円。大卒正社員は年金を含めて平均3億円だから、2億円以上の差がつく」と指摘。退職金、年金など、老後の所得だけでも、格差は「5000万円前後」と推計する。
 「就職の失敗は人格否定と思えるだろうし、『なぜ自分たちの世代だけが…』という恨みもわかる」。自ら就職氷河期を体験した山崎さんは、同世代のフリーターに理解を示すが、「フリーターは社会に利用される人生。最初の就職はスキル(能力)を高める場と割り切り、まずは正社員になってしまうべきだ」と強調する。
 では、フリーターを続けたら、老後の生活は安定しないのだろうか。次回は、厚生年金の適用範囲の拡大をめぐる動きをリポートする。
(2006/10/16)

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