(無署名記事)
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DC継続教育の難しさと課題
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すでに確定拠出年金を導入して数年を経過した企業を中心として、「継続教
育」について関心が高まっています。厚生労働省の確定拠出年金連絡会議でも、
投資教育(特に導入時の加入者教育)のあり方や継続教育のあり方について継
続的な報告や議論が行われているほか、今年度は実態調査なども予定されてい
ます。
制度導入時における加入者教育のあり方については、厚生労働省が法令解釈
通知(いわゆるガイドライン)を示していることもあり、導入各社および運営
管理機関各社もある程度均質な情報提供を行っているようにみえます。具体的
には、加入者教育の「内容」として、(1)確定拠出年金制度等の具体的な内容、
(2)金融商品の仕組みと特徴、(3)資産の運用の基礎知識、を具体的な内容も
含めて提示しているほか、「提供方法」として、(1)資料やビデオの配布(イ
ンターネット経由やCD-ROM等も含む)、(2)説明会の開催等を掲げています。
一方で制度導入後の継続教育については、法令解釈通知に事業主等は「制度
への加入時はもちろん、加入後においても、個々の加入者等の知識水準やニー
ズ等も踏まえつつ、加入者等が十分理解できるよう、必要かつ適切な情報提供
を行わなければならない」とされており、その必要性は認識されているものの、
その手法や実施時期等についてまだ手探りの状態が続いているようです。
前回の確定拠出年金連絡会議では、委員の所属しているDC導入企業に継続
教育の実施状況等についてヒアリングした結果が報告されており、先進的な実
施事例として参考になります。各社が実施にあたって検討を行っているのは大
きく以下の3つのポイントに分かれるようです。
(1)実施対象………全員参加とするか、希望者のみ参加とするか
(2)実施レベル……初歩的な確認を繰り返すか、高度な内容を行うか
(3)実施方法………セミナー形式とするか、社内報等の紙媒体を使用するか、
メールやネット経由とするか
いずれも、参加者の関心を高め、継続教育の効果を高めるために工夫すべき
ポイントです。強制的に全員参加とし、初歩的な情報提供のみでは、意識の高
い従業員の満足度は低くなるでしょう。しかし、希望者のみ参加で、高度な運
用手法などの説明会を行っては、理解も関心も低い加入者のレベルアップには
つながりません。また、費用や労力のバランスも考えなくてはいけません。多
くの企業では複数の継続教育メニューを設定して選択制にし、従業員の多様な
ニーズに応えるべく取り組んでいるようです。
一方で、自分たちの取組みが適正なものかどうかという不安の声も多く聞か
れます。一部の識者などからは「継続教育についてもガイドラインを厚生労働
省側から提示するべきではないか」などの意見が出ています。DCを導入すれ
ば事業主は運用責任から回避されますが、制度を運営する責任まで放棄できる
わけではありません。今後も、継続教育をめぐって議論が積み重ねられていく
ことでしょう。悩める事業主をサポートする役割をDCプランナーも担ってい
きたいものです。
第10回確定拠出年金連絡会議資料「投資教育の事例について」
http://www.mhlw.go.jp/shingi/2004/06/s0628-8e.html