(無署名記事)
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■確定拠出年金導入企業は何社に達するか?
企業型確定拠出年金の導入企業数が155社に達しています(8月30日現
在の規約承認数)。今年度に入ってからも順調に増えており、今年度内の20
0社突破は間違いのないところとみられます。
一方で、ある新聞では、今年度内の企業型確定拠出年金の導入見込み企業数
は700社になるのではないかという記事が報道されました。主要金融機関各
社の聞き取り調査の結果ということです。
これを意外に思う人も多いかもしれませんが、多くの実務担当者は、「現実
にそれだけの件数に達するかはともかく、勢いと必要性があるのは確か」と考
えているようです。その理由には「適格退職年金の移行問題」と「厚生年金基
金の代行返上問題」があります。
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すでに新規契約は原則として認められず、2012年3月末までに他制度へ
の移行が定められている適格退職年金ですが、この契約件数は今春の段階でお
よそ7.4万社、加入者数は915万人と言われています。
ある信託銀行の確定拠出年金担当者は「自社で適格年金を受託している企業
の件数を考えれば、毎年数百社以上の移行をサポートできなければ間に合わな
い」と語っています。そして、そのうちの少なくない件数は確定拠出年金を採
用する可能性が高いといえます。
確定給付企業年金や中小企業退職金共済への移行や、制度の廃止などに踏み
切る企業が多く発生するとしても、仮に2割が確定拠出年金に移行すれば、1.
4万社、180万人規模の導入が考えられます。10年間で平均的に移行する
とすれば毎年1,400社ということになるわけです。
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厚生年金基金においては、約1,750基金に約1,100万人の加入者がお
り、確定給付型の企業年金制度の大きな柱のひとつです。この基金には単独型、
連合型(グループ会社等)、総合型(業界団体等)といった設立形態がありま
す。
この厚生年金基金で扱っている国の厚生年金の一部について、基金独自に積
み立てから給付を行うことをとりやめる「代行返上」がこの4月から認められ
ましたが、申請した基金はすでに127を超えています(9月1日現在)。全
体の7%近くに達しており10%を超えるのも時間の問題との声も聞かれます。
特に大企業の代行返上の動きが盛んで、厚生年金基金の加入者数合計から推
定するとすでに10%以上(約110万人)が対象となると考えられています。
実際の返上については今後スキームが確立次第ということになりますが、返
上が終了すると、確定給付年金あるいは確定拠出年金等への制度変更が行われ
ることになります。数年後には、こうした企業の確定拠出年金導入が動き出す
ことになるとみられています。
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今年度中に確定拠出年金の規約承認を受ける企業が何社に達するかは分かり
ませんが、企業における確定拠出年金の導入とそれに伴う加入者数の増加は一
般の予想を上回るペースで進むことになりそうです。