[メルマガ] 「マッチング拠出をどのようにして実現させるか」

(無署名記事)
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┃  ┃「マッチング拠出をどのようにして実現させるか」
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 確定拠出年金(DC)に関する税制改正要望として、ほとんどの団体がとり
あげている項目に「マッチング拠出の認可」があります。現在、企業型DCの
掛金には、事業主負担の拠出しか認められていませんが、これに従業員の任意
拠出も認めてほしい、というものです。
 一方、アメリカの401(k)プランにおいては、もともと従業員の任意拠出がベ
ースとなっており、そこに企業が一定率を上乗せする形式をマッチング拠出と
呼んでいます。このように、「マッチング拠出」という用語の意味合いは、日
本とアメリカで若干異なることに注意が必要です(日本の制度では、単に「本
人拠出」と呼ぶ方が適切かもしれません)。
 改正要望に「マッチング拠出の認可」を加えることに反対する意見はほとん
どありませんが、実現に当たっては、いくつかの論点があります。ひとつの軸
は、「非課税拠出か、課税後拠出か」という税法上の取り扱いであり、もうひ
とつの軸は「本人拠出分の限度額を別枠で設けるか、現状(企業型DCの限度
額)のままか」という拠出限度額に関する考え方です。
 第一の論点の「非課税拠出」について考えると、これまでに勤労者個人の老
後資金形成のために非課税拠出を認める制度はなく、あえていえば、年金財形
貯蓄における課税拠出後の運用益が非課税とされているだけです。勤労者個人
の老後資金形成のためには、DCで非課税拠出が実現することの意義は大きい
と考えられますが、税務当局との交渉には困難が予想されます。単に、「マッ
チング拠出」の実現を優先するのであれば、財形貯蓄と同様に「課税後拠出」
(運用益非課税)とすることもひとつの選択肢となります。
 第二の論点の「拠出限度額」については、理想は「別枠の限度額設定(もし
くは限度額なし)」であることは、いうまでもありません。しかし、これも現
状をみると、すぐに税務当局を納得させることは難しいと思われます。やはり、
実現を優先するのであれば、企業型DCの拠出限度額から企業拠出分を引いた
差額分を本人拠出の限度額とする方法をひとつの選択肢とする必要がありそう
です。ただし、拠出限度額が現状のままでは、企業の掛金が既にその上限に近
い人(中高齢者等)の場合、せっかく拠出意欲も拠出余力も高いのに、本人拠
出枠が小さくなってしまうという問題があります。
 今後の法律改正においてマッチング拠出が実現するかどうかは、まだ微妙な
情勢です。しかし、加入者の自立心を向上させ、勤労者個人の老後資金形成の
充実を図るという観点からは、重要なポイントであると考えられます。制度改
正の要望にあたっては、各方面が連携し、実現に向かって取り組んでいく必要
がありそうです。
(参考)
企業年金連合会 税制改正要望
 http://www.pfa.or.jp/top/youbousyo/pdf/yobo_h180721.pdf

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