[メルマガ]  件数が減っても残高が増えている「適格退職年金」

(無署名記事)
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 件数が減っても残高が増えている「適格退職年金」
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 5月25日付で、信託協会および生命保険協会等が「企業年金の受託概況(2006
年3月末現在の速報値)」を公表しています。厚生年金基金や確定給付企業年
金、適格退職年金(適格年金)の現状が明らかになったリリースですが、今年
は少し驚くべき結果が示されました。適格年金の資産残高が、昨年3月末に比
べてわずかながらも増加しているのです。
 適格年金については、新規設立が原則認められず、現在は、2012年3月末の
完全廃止に向けた移行期間となっています。2002年3月末に73,582件(加入者
数917万人)あった契約は徐々に減少を続けています。
 昨年3月末には52,761件(加入者数655万人)となっていましたが、本年3月
末の現況によれば、適格年金の件数は45,090件、加入者数は567万人となってい
ます。件数にして前年比7,671件、割合にして前年比14.5%の減少となっており、
一見すると順調に解約が進んでいるようにみえます(2002年3月末との比較で
は、4年間で38.7%の減少)。
 ところが、こうした解約の進展にもかかわらず、資産残高については前年比
で0.5%の増加となりました。2002年3月末に22.66兆円あったところから解約
に伴って徐々に減少し、昨年3月末で17.18兆円まできていたところが、2005年
度の運用環境の好調などもあり、本年3月末の時点では17.27兆円に増えること
となってしまったようです。
 このように、契約件数は減りつつも資産残高が増えた適格年金の現況からは、
解約の進展にまだら模様が生じていることがうかがえます。昨年度の適格年金
の解約については、生保が大きな取り組みを進めており、解約された7,671件の
うち、9割以上が生保の受託する契約で占められていました。もともと生保の
適格年金受託割合は8割以上ですが、それを上回る解約状況です。一方で、信
託が受託する適格年金の解約ペースは遅れています。
 資産残高の変化についても、生保受託分については前年比-10.4%と大きく
減った一方で、信託受託分については前年比+9.4%と大きく伸ばすなど、その
格差が際立っています。資産残高ベースでみても、信託の受託残高は58.7%と
大きなウエイトを占めています。
 2012年3月末まで残り6年を切り、適格年金に残された時間はあまりありま
せん。契約件数を多く残している生保も、受託残高を多く残している信託も、
それぞれの立場から対応が急がれています。
(参考資料)
※「企業年金に関する基礎資料」企業年金連合会発行
※信託協会リリース
http://www.shintaku-kyokai.or.jp/html/kyoukai/b03news/NR/NR180525.html
※生命保険協会リリース
http://www.seiho.or.jp/data/news/h18/180525.html

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