(無署名記事)
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適格退職年金から特定退職金共済への資産移換の道が一歩広がる。
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平成14(2002)年4月から確定給付企業年金法が施行されたことに伴い、適
格退職年金制度は、平成24(2012)年3月末に廃止されることとなりました。
資産移換を伴う他の制度への移換については、一部の制度が認められており、
その受け皿となっています。
現在、選択肢として認められているのは、中小企業退職金共済(中退共)、
確定給付企業年金、確定拠出年金です。厚生年金基金への移行は、従来から認
められていますが、現状では有力な選択肢とはなっていません。
中小企業での利用が多い適格退職年金においては、確定給付企業年金の採用
を避け、中退共への移行を選択する企業が少なくありません。中退共を運営す
る勤労者退職金共済機構のホームページ(http://chutaikyo.taisyokukin.go.jp)
によると、平成17(2005)年11月末現在では、延べ7,881社が制度移行を行って
います。しかし、すでに中退共を採用している企業や中退共に加入し得ない中
堅企業については、中退共への移換が行えず、少なからずハードルになってい
ることが指摘されています。
一方で、全国各地の商工会議所を中心に民間で実施している特定退職金共済
(特退共)は、ほぼ同様の仕組みでありながら、適格退職年金からの移換が認
められていません。特退共は、所得税法の施行令に基づいており、他の退職給
付制度と違い、制度全体を規定する一本の整った法律をもっていません。その
ため、受給権確保の取り組みは行われているものの、情報開示や忠実義務など
の問題が明らかになっておらず、適格退職年金からの移換の対象にならなかっ
たというわけです。
このようなことから、日本商工会議所では、中小企業の円滑な人材確保や従
業員の福利厚生の向上といった観点から、全国523の商工会議所などの協力を得
ながら、適格退職年金から特退共への非課税での移換について強力な要望活動
を行ってきました。
その結果、昨年12月6日の自民党税制調査会の審議において、法律の整備を
前提として、特退共への非課税での資産移換が認められる見込みとなりました。
今後、所管省庁において、関係方面とも調整を図りながら、必要な法律整備の
作業が行われる予定です。
中小企業は、退職金制度を安易に廃止するのではなく、なるべく資産を移換
して保全していくことが大切です。少しでも従業員の老後所得を充実させてい
けるように、特退共を含めた活用を模索していくことが大切です。
(参考)日本商工会議所HP 会頭コメント
http://www.jcci.or.jp/nissyo/kaito/2005/com051215_2.html