(無署名記事)
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投資チャンスの時期こそ慎重な教育を
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今年度中にDCを導入した企業のうちの数社にヒアリングをしたところ、以
前にDCを導入した企業とは異なる反応が返ってくるようになりました。具体
的には、(DCの加入が選択制の企業の場合)DCの加入率が上昇したり、個
人別管理資産に占める投資信託の割合が増加したというようなことです。
もちろん全てのDC導入企業で同様の結果になっているわけではないと思い
ますが、昨年までに一般的に言われていた「DCと前払い制度を選択制にする
と、DCの加入率は低くなる」「運用割合では、元本確保型が4分の3近くに
なる」といった流れとは明らかに異なる動きがみられます。
これらの理由としては、例えば、導入教育(説明会)における運営管理機関
のノウハウが蓄積されてきたことの成果や、公的年金に対する漠然とした不安
の中で、自助努力の意識が高まったことなども考えられます。しかし、運用指
図時に投資信託等のリスク資産を選択する割合が7割程度まで向上しているケ
ースが多い状況をみると、やはり、市場環境の好転に伴って加入者の投資に対
する関心が高まっていることがあげられるでしょう。
実際に今年度にDCを導入した企業の中には、加入者の運用に対する関心が
予想以上に高いと指摘している企業もいくつかあります。投資教育の効果を高
めるには、加入者自身の関心が高くなくてはならないため、直近のこうした状
況は投資教育を実施する事業主や運営管理機関にとっても大きなチャンスです。
ただし、市場環境が好調な時期は、投資の基本を理解していない人も周りに流
されてリスクを取りたがる傾向がありますので、より一層、丁寧でわかりやす
い投資教育が求められます。
想定利回りを2.0~3.0%前後に設定している企業が多いと思われる中、リス
ク資産を一定割合組み入れることは、利回りを確保するために必要な考え方で
す。こうした状況が投資教育の成果であるならば、基本的にはよい傾向だと思
われますが、今年度については、一般的にもかなり好調な運用成果となってい
ると考えられるため、万一環境が悪化した場合の反動が懸念されます。年金運
用における投資教育の基本として、目先の市場動向だけに流されない長期的な
視点が重要であることはいうまでもありません。好機にこそ慎重を期した取り
組みが大切だといえます。