(無署名記事)
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中小企業に朗報? 中退共への移換限度額撤廃
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公的年金改正にかかる関連法案について、2月16日より厚生労働省のホーム
ページでPDFファイルが公開して閲覧できるようになっています。概要、要
綱、法案、法律の新旧対照表などが参照できますので、未読の方は確認をして
おきましょう。
[国民年金法等の一部を改正する法律案について]
http://www.mhlw.go.jp/topics/2004/02/tp0212-2b.html
注目すべきポイントは多々ある改正案ですが、今回は中退共への移換限度額
の撤廃について触れてみたいと思います。中退共は適格退職年金から資産移換
を行える制度のひとつですが、過去分については中退共の掛金で10年相当分を
上限としているのは皆さんもご存じのとおりです。
ところが新聞等でも既報のとおり、この中退共への移換限度額について撤廃
されることが今回の年金改正案に盛り込まれています(第36条。確定給付企業
年金法の改正関連)。実施時期は来年の4月1日とされています。
適格退職年金を採用している企業の実に8割近くが従業員数100名未満の中
小企業であると言われています。こうした企業にとってはしっかりとした企業
年金制度を確定給付企業年金を用いて運営していくことが困難である場合も多
く、中退共はその受け皿として機能することが期待されているわけです。
中退共は(1)掛金は全額損金である、(2)拠出後の運用責任を事業主は
負わない、(3)制度がシンプルで退職金規程に組み入れやすい、といった特
徴があり、中小企業の退職給付制度の一部分として活用するには非常に魅力的
な制度です。
しかし、今回の移換限度額の撤廃がいたずらに中退共への移行に拍車をかけ
ることにならないようDCプランナーは配慮する必要があります。なぜなら一
方で、中退共は(1)自己都合退職について給付額をカットすることができな
い、(2)どんな理由があっても事業主に資産が返還されない、(3)事業資
金として流用することができない、(4)短期在職者については退職金がない、
あるいは低いなど不利になる、などの特徴もあり、中小企業の事業主や従業員
のニーズを満足しない部分もあるからです。
とはいえ今回の制度改正により、中退共は中小企業にとって適格退職年金の
魅力的な受け皿として浮上してきそうです。もちろん、適格退職年金の制度移
行が加速する効果も期待できます。移換限度額の撤廃により「過去分につい
ては全額中退共移換」「将来分については他制度と併用しながら適切な掛金水
準を設定」といった制度再構築も考えられます。コンサルティング等を行うD
Cプランナーにとっては、今回の改正案が成立すれば制度再構築の選択が増え
ることになり、腕の見せ所といえるでしょう。