(無署名記事)
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「受給時課税」が強化されるからこそ高まるDCの意義
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自民党の税制改正大綱が固まり、具体的な議論がスタートしています。DC
においても拠出限度額の引上げなどが改正項目としてあがっていますが、気に
なるのは公的年金等控除の引下げと老年者控除の廃止でしょう。
今までの公的年金等控除は、60歳~64歳までと65歳以上の2段階に分けて設
定されており、65歳を超えると老年者控除等ともあいまってほとんどの年金受
給者が非課税になる「受給時実質非課税」の制度になっていました。
しかし、今回の税制改正大綱では2005年より公的年金等控除を一本化し、65
歳以上も60歳~64歳までの控除枠にそろえる案と老年者控除を廃止する案が示
されています(ただし、当面120万円までは非課税とするなど特例措置を講ずる)。
これにより、平均的な年金給付を受けている受給者も所得税を納めなくてはい
けなくなる可能性が高まっています。
また、所得税の課税対象となることで、翌年度以降は住民税や健康保険料の
負担が高まることも問題となります。なぜなら課税所得額が住民税や国民健康
保険料の算定基礎となってくるからです。
つまり、公的年金等控除の引下げは所得税アップ→住民税アップ・国民健康
保険料アップという形でトリプルの手取り減少要因になってきます。例えば、
公的年金を200万円程度受給している人にとっては10数万円の手取り減少になり
ます。
話は公的年金の問題にとどまりません。公的年金等控除の対象となる所得に
はDBやDCによる年金収入も含まれるからです。公的年金等控除のメリット
により「拠出時非課税→運用時非課税→給付時課税優遇」の形を取ってきたD
Cにおいても手取り減少要因となりますから、今後のリタイアメントプランニ
ングに影響を与えることになります。今までと同じ老後所得を得るためにはよ
り多くの資金を準備しなければなりません。
しかし、これをもってDCのメリットが下がったととらえるのは早計です。
給付時の課税が高まったとしても拠出時および運用時の非課税メリットはDC
に与えられた大きなメリットだからです。公的年金の水準が抑制され、年金受
給者への課税が強化される傾向にある今だからこそ、こうしたメリットを最大
限に活用して老後資金形成を効率的に行っていくことが求められてくるのです
。
いずれにせよ、税制改正や公的年金改正の動向については最終的には政治決
着に委ねられることも多くまだ予断を許しません。引き続き注目が必要です。