[メルマガ] 急ピッチで進む給付削減、企業再生につながる制度再構築を

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急ピッチで進む給付削減、企業再生につながる制度再構築を
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 退職給付制度、特に企業年金において、給付の引下げと解散が続いています。
1990年代後半から深刻化した景気の低迷と運用難により、代表的な企業年金制
度のひとつである厚生年金基金では1997年度から給付の減額が認められるよう
になりました。それ以来、日立製作所厚生年金基金を筆頭に多くの企業が給付
の見直しに着手し、現在のDC、DB両法の成立につながる退職給付制度再構
築の引き金にもなりました。
 厚生労働省によると、厚生年金基金において、給付を引き下げた基金は今年
の3月末時点で累計447基金にも上っていることが明らかになりました。その中
にはなんと3回目の給付削減に踏み切ったところもあるそうです。また、解散
を選択した厚生年金基金の累計がすでに235基金にも上っています。解散に伴い
再構築された退職給付制度においては給付の削減を行う場合がほとんどです。
 1996年度末に1883基金(加入者数1213万人)を数えた厚生年金基金も、1割
強が解散に至り、4基金に1基金弱が給付引下げに踏み切っています。この傾
向は他の退職給付制度でも同様です。適格退職年金は2012年3月末に廃止され
ることもあり解散(ないし制度変更)が続いていますし、退職一時金等の給付
引下げが行われるといったニュースも散見されます。
 退職給付の削減は急ピッチで進められているわけですが、こうした制度再構
築が経営の合理化や企業のコストカットの要請のみで進められているとしたら
こうした傾向には注意が必要です。
 もちろん、退職給付のコストによって企業の活力が損なわれないよう、制度
を見直していくことは重要です。売上げをなんとか維持し、雇用が確保された
としても、退職給付制度の負担が企業の足かせになってしまっては、本末転倒
だからです。
 とはいえ、安易な退職給付カットは従業員のモラルに悪影響を及ぼし、優秀な
人材の確保にマイナスに作用することも意識しなくてはいけません。もちろ
ん、退職給付は後払賃金としての性格をもち、いわば社員に対して負っている
内部債務であることを忘れてはいけません。
 退職給付制度の再構築は、企業の活性化につながり、さらに従業員の活性化
につながるものでなくてはなりません。そのためには、労使間でのしっかりと
したコミュニケーションをはかり、将来ビジョンを共有しながら取り組んでい
くことが欠かせません。給付削減の要求が強い昨今だからこそ、企業と従業員
の利益を第三者的に判断し、総合的に助言する視点が求められています。

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