[メルマガ] DB型企業年金もポータビリティを検討?

(無署名記事)
DCプランナーメールマガジンにコラムを提供しています。


 DB型企業年金もポータビリティを検討?
  ─────────────────────────────────  
 去る6月12日に開かれた厚生労働省社会保障審議会年金部会において、DB
型企業年金のポータビリティについての検討が行われました。DC制度を中心
に関わる方にとっても、退職給付制度のコンサルティングを総合的に取り扱う
方にとっても、DB型企業年金が将来のポータビリティをもつことは重要なポ
イントです。ここでその議論の一部を紹介してみたいと思います。
 DCプランナーの皆さんはご存じのとおり、DC制度にはポータビリティと
いう特徴があり、退職事由によらず、DC口座にある個人別管理資産額を全額
退職後持ち運ぶことができます(使用期間3年未満の加入者について事業主返
還を定める場合を除きます)。転職先企業がDCを採用していればそこに資産
額をそのまま移換できますし、そうでなければ国民年金基金連合会がその受け
皿となります。中途引き出しが認められない代わりに老齢給付を受けるまで資
産形成を継続することができるようになっているわけです。
 一方、適格退職年金や厚生年金基金、確定給付企業年金といったDB型企業
年金については、「個人単位での移動に伴う」ポータビリティは非常に限定的
でした。適格退職年金で資産移換が認められているのは、人事交流などに際し
て事業所間で合意をしているケースに限られているのが現実です。厚生年金基
金では厚生年金基金連合会が中途脱退者の受け皿として大きな役割を果たして
いますが、厚生年金基金間で個人資産が移換・通算される仕組みはありません。
また、厚生年金基金連合会についても、多くの人は加算部分について一時金で
受け取ってしまい、代行部分のみの受け皿となるケースが多いようです。確定
給付企業年金についてはどうかというと、規約においてあらかじめ定めておく
ことで、厚生年金基金や他の確定給付企業年金への移換が可能になっています。
 しかしそれ以外についての移換は認められておりません。また、厚生年金基
金連合会に相当する組織もありません。
 現状のDB型企業年金制度は、企業独自の退職給付制度を基盤としており、
あまりポータビリティについては考慮されていないというのが実情です。一方
で、転職に踏み切る者や転職希望者の割合は高まっており、彼らの退職給付が
転職のつど、課税されたうえで一時金になってしまうことは老後資金準備の観
点からすると望ましくありません。
 先の年金部会においては、DB型企業年金からの脱退一時金や解散時の分配
財産を通算して受給する道はないかという議論がなされました。また、厚生年
金基金と確定給付企業年金相互でのポータビリティの拡充についても指摘が行
われました。その際に厚生年金基金連合会が一定の役割を担っていく必要があ
るのではないかとの意見もあったようです。
 DB型企業年金制度は、企業ごとの人事制度とも密接な関係があるうえ、給
付設計やその水準にも違いが大きく、転職先の制度に資産を持ち運ぶポータビ
リティは調整が難しいかもしれません。しかし、DCにおける個人型のように
資産をプールできる器を作ることは可能に思えます。厚生年金基金連合会や個
人型DC(国民年金基金連合会)がその役割を担うこともできるかもしれませ
ん。もちろん、その場合には個人の資産額が明確になり、本人にきちんとディ
スクローズされる体制作りも求められます。
 DB型企業年金のポータビリティについては、学識者からの提言も行われ始
めています。具体的な道筋がつけられるのはもう少し先のことになるでしょう
が、DB型企業年金についてもポータビリティの検討が行われていることは、
来年行われる公的年金改正の動向とともに今後注目すべき点といえそうです。

コメントを残す