(無署名記事)
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■積立不足・解散・代行返上~激変する厚生年金基金
代表的な企業年金のひとつであり、会社員の3人に1人以上が加入していた
厚生年金基金に大きな変化が起きています。2003年度は厚生年金基金の動向が
DCその他の企業年金制度再編に大きな影響を及ぼすことになるでしょう。
キーワードは「積立不足、解散・代行返上」です。
「積立不足を有する厚生年金基金は1,642。全体の約95%」
「2002年度に解散した基金が73。全体の約4%」
「代行返上を認可された基金が2002年度末で480以上。全体の30%弱」
2001年度決算によると、厚生年金基金が抱えている積立不足はほぼ7兆円に
達しています。2002年度の運用状況もマイナス10%程度と見られ、3年連続の
マイナスは確実な状況です。3年連続のマイナスとなれば、積立不足が拡大し
ているのは間違いありません。積立不足が10兆円を超える可能性すらあります。
企業にはこれを穴埋めする負担が生じるものの、その体力は乏しく、各社の企
業年金制度再編の大きな要因となっているのは周知のところです。
こうした状況に耐えかね、解散を選択する厚生年金基金も増え続けています。
2002年度に解散に及んだ厚生年金基金は73基金に達しました。1年あたりの解
散基金数としては過去最高となっています。DCその他への制度移行に伴う解
散も出てきてはいるものの、その多くは財政的な行き詰まりを経ており、必ず
しも従前額が保証されるとは限りません。2003年度も解散基金が増えることは
ほぼ間違いないところです。
そして、代行返上という動きも加速しています。代行返上を認可された基金
は2002年度末で480基金を超えました。2002年4月施行の確定給付企業年金法を
受けて認められるようになりました代行返上は1年で基金全体の30%弱にまで
達しました。その中核となっている単独・連合型基金の総数からすると約45%
という驚くべき割合です。
実際に過去分の代行返上をすませ、確定給付企業年金に移行するのは10月以
降と見られますが、年度内には多くの基金が代行返上を終え、厚生年金基金の
数は1,000を割る可能性があります。代行返上した後はひとまず、確定給付企業
年金に移行することになりますが、給付水準の見直し(多くの場合引き下げを
伴う可能性が高い)、キャッシュバランスプランの採用、一部のDCへの移行
などの取り組みが各社で見られることになるでしょう。
単独・連合型の厚生年金基金を中心に2003年度は企業年金再編の大きな波が
押し寄せます。その後は、総合型に加入している中堅・中小企業の企業年金制
度の再編も控えています。退職給付コンサルティングを行うすべての人にとっ
て、厚生年金基金の動向からは目が離せないところでしょう。