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[メルマガ]  公的年金改正法案、成立なる

(無署名記事)
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 公的年金改正法案、成立なる
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 去る6月5日、「国民年金法等の一部を改正する法律案」が参議院で可決、
2004年年金改正法案が可決しました。公的年金制度の改正についての正確な理
解はDCプランナーにも欠かせません。ここにその概要をまとめてみます。
[基本的な考え方]
1.社会経済と調和した持続可能な制度の構築と制度に対する信頼の確保をは
  かる。
2.多様な生き方、働き方に対応した制度を構築する。
[1:給付と負担の見直し]
1.基礎年金国庫負担割合の引上げ(現行3分の1から2分の1に)。2009年
  度までに引上げを完了する。
2.財政検証の実施
3.保険料水準固定方式の導入等
 (1)厚生年金保険料率については2004年10月から毎年0.354%ずつ引上げ、
    2017年度以降は18.30%で固定する。
 (2)国民年金保険料(月額)は、2005年4月から毎年280円ずつ引上げ、
    2017年度以降は16,900円とする(いずれも2004年度価格。物価上昇等
    に応じて見直される)。
 (3)社会全体の保険料負担能力の伸びを年金改定率に反映させることで、
    給付水準を調整するマクロ経済スライドを導入する。賃金(物価)の
    伸びにスライド調整率(平均年0.9%程度)を引いたものが年金額の改
    定率となる。ただし、マイナス改定は行わない。(2005年4月から)
 (4)標準的な厚生年金(夫婦の基礎年金を含む)の世帯の給付水準は、少
    なくとも現役世代の平均的収入の50%を上回るものとする。
[2:多様な生き方、働き方に対応した制度の導入]
1.在職老齢年金制度の見直し等
 (1)60歳台前半の被用者の在職老齢年金制度について、在職中の一律2割
    支給停止を廃止する。(2005年4月から)
 (2)70歳以上の被用者の厚生年金給付については、60歳台後半の被用者と
    同様、高所得者についてのみ老齢厚生年金の支給停止を行う(保険料
    負担はなし。基礎年金は支給)。(2007年4月から)
 (3)65歳以降の老齢厚生年金について繰下げ制度を導入する。
   (2007年4月から)
2.次世代育成支援の拡充
  子が3歳に達するまでの間、育児休業期間について保険料を免除するとと
 もに、勤務時間の短縮等により標準報酬が低下した場合には、年金額の計算
 上、低下前の標準報酬とみなす措置を講じる。(2005年4月から)
3.女性と年金
 (1)第3号被保険者期間、配偶者が負担していた厚生年金保険料について
    は、被扶養配偶者と被保険者が共同して負担したものであることを基
    本的認識とし、離婚した場合など、その配偶者の厚生年金(保険料納
    付記録)の2分の1を分割できるものとする。(2008年4月から)
 (2)離婚した場合の厚生年金については、配偶者の同意又は裁判所の決定
    があれば、分割できるものとする(当事者双方の婚姻期間中の合計額
    の半分を上限)。(2007年4月から)
 (3)遺族年金制度の見直し(2007年4月から)
   ・自らの老齢厚生年金を全額受給した上で、従来の遺族給付との差額を
    遺族厚生年金として支給する仕組みに改める。
   ・子のいない30歳未満の遺族配偶者の遺族厚生年金を5年の有期給付と
    する。
   ・中高齢寡婦加算の支給対象については、夫死亡時40歳以上とする。
4.障害年金の改善
  障害基礎年金と老齢厚生年金又は遺族厚生年金の併給を可能とする。
 (2006年4月から)
[その他の改正事項]
1.国民年金保険料の徴収対策の強化
 (1)所得に応じた多段階免除制度の導入(2006年7月から)
 (2)若年の就業困難者に対する納付猶予制度の導入(2005年4月から)
 (3)市町村からの必要な所得情報の取得(2004年10月から)
2.年金制度の理解を深めるための取組み
  保険料納付実績や年金額の見込み等の年金個人情報を被保険者にわかりや
 すい形で定期的に通知する(ポイント制)。(2008年4月から)
3.3号被保険者の特例届出
  過去の第3号被保険者の未届期間について特例的に届出をすることができ
 ることとし、届出に係る期間は保険料納付済期間とする。(2005年4月から)
[企業年金関係の改正事項]
1.厚生年金基金の安定化(2005年4月から)
 (1)免除保険料の凍結を解除する。
 (2)分割納付、納付額の特例といった解散時の特例措置(3カ年の時限措
    置)を講じる。
2.確定拠出年金の改善
 (1)拠出限度額の引上げを行う(政令事項)。(2004年10月から)
 (2)中途引出しの要件を緩和する。(2005年10月から)
3.企業年金のポータビリティの向上(2005年10月から)
 (1)厚生年金基金、確定給付企業年金間で加入者の年金原資の資産移換を
    可能とする。この移換が困難な場合は、企業年金連合会(厚生年金基
    金連合会を改称)において年金として受給できるようにする。
 (2)厚生年金基金・確定給付企業年金から確定拠出年金への加入者の年金
    原資の資産移換を可能とする。
 なお、厚生労働省のHPでは、法案審議等に用いられた参考資料や一般向け
の解説パンフレットのデータなども掲載されていますので、自身の研鑚や説明
資料等に活用してください。
・参考資料:
http://www.mhlw.go.jp/topics/2004/03/tp0315-2.html
・「持続可能」で「安心」の年金制度とするために~平成16年年金制度改正案
のポイント~:
http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/nenkin/kaikaku/04kaisei/index.html
☆次号から、「公的年金改正の各論解説」を1日号、15日号の両方に集中連載
 いたします(全6回予定)。ご期待ください。

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